双子ランナーの秘密 [いきいき卒業生]

副校長より

新春を駅伝観戦で迎えた方もたくさんいらっしゃるかと思います。
この時期、よく「なぜトップランナーに双子がおおいの?」ということが話題にのぼります。箱根の山の神、柏原竜二さんも双子でした。日の丸をつけた日本代表レベルにしぼっても、宗兄弟・大南姉妹・小島兄弟など、双子のトップランナーは陸上競技ファンの印象に強く残っています。

実際に全国高校駅伝では毎年、一般の双生児出生率の倍以上の比率で双子の選手が出場します。
2014年、東大附属卒の高橋広夢さんが早稲田の5区として走った箱根駅伝では、東洋大の設楽啓太・悠太兄弟、駒澤の村山謙太・城西大の村山紘太兄弟、大東文化の市田孝・宏兄弟、順大の松村優樹・和樹兄弟の4組の双子ランナーがいました。彼らは現在、実業団チームの主力としてニューイヤー駅伝で活躍しています。

一卵性と二卵性を比較した持久走の研究では、「遺伝的要因」より「環境的要因」の方が大きいことがわかっていますが、その機序は明らかになっていません。双子ランナー本人たちの言動から推察する形で、一般には「身近なライバルで最大の理解者と切磋琢磨できることが大きいのでは?」と考えられています。それならば他の持久的種目でも同様の傾向がみられるはずですが、この検討が充分なされていません。他には、互いの動きを見合うことで動きの質が高まる「鏡トレーニング」説や、なかには「双子は胎児期に一人のお母さんから二人分の酸素を奪い合うために、産まれたときには高地トレーニングが済んでいる」という珍説もあります。この秘密を解き明かせれば、人類史上の大きな貢献になるかもしれません。

ちょうど一年前に自らも双子のお母さんというライターの松田珠子さんに取材を受けました。以前はこうした取材は福島昌子先生の担当でしたが、63回生の平澤日和さん(ひとつ前の記事で紹介した平澤日奈子さんの双子の相方で、自分も高校総体の関東大会で走った800mランナーです)の卒業研究を元に淺川がお答えしました。

松田さんの記事はこちら(外部リンク:東洋経済オンライン)

実は編集部の意向でごっそり削られてしまいましたが「隠れ双子のトップランナー」の存在が、「身近なライバル・サポーター論」を揺さぶるという部分が、彼女の研究の一番面白いところなのです。平澤姉妹のように片方だけが長距離ランナーで、一般には双子と認知されていないトップランナーがかなりの数にのぼるというのが彼女の仮説です。実際、東京都トップレベルや関東大会の出場者の中に一定数の「隠れ双子」が含まれていました。

リンクの記事では限られた字数の中ではどうしてもわかりにくい話になってしまうので、削られたのは仕方ありません。松田さんは今後、平澤さんの卒業研究も読み込んで、本人にもインタビューして、このテーマを追ってくださるということなので、楽しみにとっておきたいと思います。

写真は63回生平澤日和さんと64回生木住野円さん

(文責:淺川)

Posted by forschool@